ARABAKI ROCK FESTIVAL.2008 髭(HiGE)

Acoustic
ダーティーな世界
溺れる猿は藁をもつかむ
ロックンロールと五人の囚人
下衆爆弾

セッティングの時点で何かがおかしい。元々おかしいのにもっとおかしい。ドラムチェックを終えてコーラスチェックにて、PAさんに「お誕生日おめでとうございます」とにこやかに伝えたコテイスイが次にチェックしはじめたのは、エレキギター。ギターってパーカッションでしたっけ?そして須藤さんのマイクの手前にセッティングされている物は、サンプリングパッド(こんな感じの、よくドラマーさんが電子パーカッションとして使っている機械でした)とはこれいかに。そして、斉藤さんの所にはメイン以外にもう1本アコースティックギター。はじめて見た、斉藤さんがアコギを抱える姿が妙に滑稽。いやいや、なんでしょうかこのフェスだとは思えない面白いステージ。天気も、青空が見えているのにしとしと雨が降ってきたり、本編はじまる前に止んだり、髭ちゃんらしいというか。そうそう、昨日のピロウズでも、最後「ハイブリッドレインボウ」で大粒の雨〜怒髪天のステージでタイミング良く止む雨 のような事があって、アラバキの空は演出の天才だなあなんて思ったり、シンちゃんの雨男っぷりにももはや感動の域だったり(笑)しました。
いつものSEで出てきた須藤さんが、ドラムスティックを手に取って、ゆらゆら踊る。
6つパッドのサンプラー、トン と軽快に叩いたスティックを客席の方に向けて、ニヤリ。
このメッセージ聞こえるかい?
わあああ Acoustic!!

三軒茶屋で演奏された「無題」のような、アレンジバージョン、というよりむしろセッション。半年以上演奏されなかった、リクエストされてもやんわり断っていたのはこうして新アレンジで温めていたからなんですか…それをここで、フェスで披露してしまうとは!横に揺られて心地よいリズムの中、自分で唄うより多く「右も左も右も左も右も…」「嫌になっちゃうンだろ」「正直もう」自何度もパッドから出る声を遊ぶように叩いて、時にドラムスティックをツノのように掲げておどけてみせる須藤さん。楽しそうに目を合わせて演奏する宮川・フィリポのリズム隊、いつもに増してにやにや嬉しそうな斉藤UKさんのアコギのストロークがやっぱり可笑しい。そして背中を向けて中腰でギターをかき鳴らすコテイスイ。その姿と繰り広げられる音だけで愉快で、もう、ずーっと聴いていたい気分でした。このメッセージ聞こえるかい?最後はマイクに向かってやさしく何度も唄う。続くダーティーな世界も、前の曲から休む間もなく突入するアルペジオのイントロから、MCも間奏の一部分のみ(なんて言っていたかな、忘れてしまった)なシンプルなもの。兎に角踊れ踊れ踊るよ踊るよ。
溺れる猿では、前方に来てぴょんぴょこ目の前で動きまわるコテイスイを観て、まん丸眼で驚き笑う宮川さん。なぜ毎度そんなに新鮮に驚けるのかとこっちが驚く(笑)フェスでのジャカジャカジャンケンは必死になってしまう、えらい楽しいこと楽しいこと!続く囚人では、これでもかと後ろから押し、客席1番の盛り上がり!そんな中で 最後に 下衆爆弾 って。もう笑うしかないですよね。立ち位置を離れ、楽しそうに叩くフィリポの後ろに陣取ったコテイスイ、なにやらヘンテコな踊りで参戦する。宮川さん、斉藤さんもぎゅっとドラムのほうに集まってにやにや。アラハバキの神様ごめんなさい、空に響くはゲス、ゲス、ゲスの叫びと踊り狂うお客さん達。最後に須藤さんはコテイスイのドラムを思い切り叩いて、じゃあねとひとつ笑みを向けて帰っていったよ。
普段とは違うセッティングのせいか、トラブルが多くただでさえセッティング時間が押して、はじまったと思ったら約10分も延々と続くAcousticを聴かされて、たった5曲で正気に戻らされたこっちの身にもなって下さい。もしかしたらあの場にいた全員が思ったことかもしれない。もちろん自分は、良い意味で。最高でした!


レポ以外の思うこと色々…そう、ここまで観て、感想書いて、これアラバキだよね!?って笑ってしまった。今回の須藤さんは、ツアー+三軒茶屋の時と同じ、黒いロンT(その分宮川さんの、目に痛いほどの赤色ポロシャツが面白かったのだけども)で、奇抜な衣装とステージ、と、ぶっとんだMC、タテノリパーティ曲満載な、"フェスの髭ちゃんイメージ" をすべて裏切っていました。自分は、まさかこんな髭ライブが観られるとは思わず、嬉しくて愉快で最高で仕方がなかったし、濃ゆい髭ファンお仲間さんの中では、ライブ後興奮しながら一緒に手を叩き合ったりしたのですが、周りのお客さんからは「短い!」「不完全燃焼だった」「せめて黒にそめろ聴きたかった」などと一斉に聞こえてきた。そう、冷静に考えるとその通り、こういう時にしか観られないからひげ観に来た!って人だったら もっと知っている曲やってくれよ!と思うよなあって。

2006年のアラバキでの自分の感想を引用すると、「今までのフェスで一番、あ、売れる 売れてしまうかも そんな予感がした」そのくらい、その場にいる全員が一気にもっていかれるような、奇抜で楽しすぎるステージでした。そしてそれを期に、フェスでは、全員に受け入れられる、楽しい定番セットリストを1度たりとも崩さず披露してきたし、それこそが全員が思う"髭ちゃん"でした。けれども、そのフェスライブを何度も見てきたいちファンとしては、フェスではじめて観た髭を好きになる / なったお客さんに向けたフェス用ステージ が繰り返されることに、どこかマンネリを感じてしまっていました。思い出すのは、去年のフジロック、念願のホワイトステージ。でもいつもと変わらない定番セットリストとヘンテコアクションに、楽しかったけれども 終演後首を傾げてしまったこと。「こんな晴れ舞台なのに、もっと他に見せ方が出来るバンドじゃなかったっけ?」……もしフジロックで今日と同じものを披露したら、ある意味伝説に残るステージになったんじゃないかなあとか…それは考えすぎですけども(笑)
フェス仕様にしていた、外向け髭ステージ のイメージを完全にぶち壊して「今回は好きにやらせてもらおうか」って伝わってくるアラバキの彼らは、やってくれた!と思った。最高で、痛快だった。もしかして、三軒茶屋ライブで、何かがふっきれたのかな、とか、思い出したのかな、とか、フェスのステージに関しても、もしかしたら自分達で違和感を感じていたのかな、とか、勝手に想像してしまいました。なにより、すごく楽しそうだった。
そんな観ている側にとっては最低で最高さ、な、様々な感想の聞こえたのこのステージは、この先への実験や伏線だったんじゃないのかなあ。またさらに進化して、ここからどうお客さん全員のココロをかっさらっていっていくのかな、って楽しみで楽しみで。だから執拗にライブを観に行ってしまうよ、気持ちの悪いことに(笑)。えらそうに言える立場でもなんでもないけれども、ファンの予想を裏切ってそれ以上のパフォーマンスを見せてくれる髭ちゃんが面白くて大好きなので、様々な意見はあれど、これからもさらなるワクワクと底抜けにハッピーな空間を期待してます!
ああ 文章崩壊にもほどがありますが、どうしても吐き出したかった。そんなことをぐだぐだと考えてしまうようなライブでした。

気になったことひとつ。ステージ袖でバクホン栄純さんが見ていらしたのは、SPEEDSTAR繋がりだとは思うけれども、コテイスイ使用ギターはもしかして栄純さんのギターだったのかな?なんて。レスポールっぽく見えたので、間違っていそうですけれども、気になります。大きいステージで新旧曲演奏して暴れるバックホーンは、凄くかっこよかった!光舟さんベースの動きっぷりと上手さに惚れ惚れ、栄純さんのスモークまみれながらのギターソロに釘付けでした。素敵だ。